そばつゆ一気飲みブログ

言葉は翼を持つが、思うところに飛ばない

より良いカルボナーラを作るために留意したい10の事項

 日本人が本場のカルボナーラを再現するためには途方も無い労力がかかる。今回は1おくまんちょうドル円個という膨大な量のカルボナーラレシピを精読し、2週間に1回は全日本カルボナーラコンテストで優勝している筆者が微力ながらアドバイスをしようと思う。

 

目次

・シェフでもないのにシェフの真似をするな

・オリジナルも作れないのにオリジナル性を出そうとするな

・材料の重さは小数点以下第一位まで測れ

・茹で汁の塩は親を殺すつもりで入れろ

・卵は思春期のチンコくらいすぐ固くなる

・生クリームを入れるか入れないかは両方試して自分で判断しろ

・迷ったら料理人より科学者を信じろ

・余熱調理に憧れる気持ちは分かるが、余熱を自在に操れるような料理玄人はそもそもカルボナーラの作り方程度で料理本を開かない

・グアンチャーレやパンチェッタが手に入らないからってメソメソするな。どうせ目隠しして食えば鶏肉と豚肉の違いも分かりはしない

カルボナーラの出来不出来に関わらず、やがてお前は広い宇宙の中でただ死ぬ

 

・シェフでもないのにシェフの真似をするな

 「シェフの真似をすればいい料理が作れる」これは料理が好きなのに料理が下手な人間に一番多い勘違いだ。

 一般に、卓越した職業調理師は材料を目分量で測り、二つ以上の作業を同時進行し、淡々と目の前の混沌(カオス)を処理して料理という秩序へと収斂させてゆく。その姿はさながらレオナルド・ダ・ヴィンチ堀江貴文が憑依したかのようであり、多くの調理初心者は魔術のような手際の良さに目を奪われる。

 しかしそれは長年における研究と実践の蓄積からくる必然であり、我々のような素人がその軌跡をなぞったところで同じような結果が得られる訳ではない。画家と同じように手を動かしても絵が描けないのと同じだ。まずは大まかな調理の流れを理解し、一つ一つの作業を丁寧に実行するしかない。

 

・オリジナルも作れないのにオリジナル性を出そうとするな

 自分で証明できない定理を使う高校生、原典を読んでいない癖に独自の解釈を盛り込む大学生、4分間の漫才も作ったことがないのにシュールネタに走るコンビ……

 結果を出すことが何より優先される資本主義社会において、さしあたりの解決策としてそのような手段を用いるのは大いにありだろう。しかし姑息な方法で段階を踏まず結果のみを求めたところで、後々苦しむのは自分である。

 より「正しい」カルボナーラを作りたいのであれば、まずはイタリア語で書かれたレシピか、せめて「カルボナーラ イタリア レシピ」「カルボナーラ 歴史」"Authentic Italian Spaghetti Carbonara"等のキーワードで検索すべきだ。

 

・材料の重さは小数点以下第一位まで測れ

 「だって平野レミは軽量せず適当に入れてるじゃん」と言いたくなるかもしれない。だが安心してほしい、貴方は平野レミではない。凡庸で経験もない人間は「つまみ」や「適量」という感覚的表現を出来るだけ廃し、トライ&エラーで少しずつ理想のカルボナーラに近づけていくしかない。

 

・茹で汁の塩は親を殺すつもりで入れろ

 パスタを茹でる際、お湯に塩を入れる理由には大きく分けて二つある。一つは「デンプンの糊化を適度に抑制し、つるつるぷりぷりの食感にすること」もう一つは「パスタに塩味をつけておくこと」である。「沸点を上げるため」とも言われているが、1〜2%程度の食塩では沸点はそこまで変わらない。

 パスタはうどんやラーメンと違い、麺自体に塩が含有されている訳ではない。そのため、ふにゃふにゃで味のない麺にならないためにも茹でるお湯には相応量の塩を入れる必要がある。勿論、「適量」ではなく貴方が試行錯誤の末見つけた最適な量を。

 また、日本の水は軟水だがヨーロッパ圏のほとんどでは硬水が流れている。硬水に含まれるミネラルは塩化ナトリウム同様パスタを美味しく仕上げるようになっているため、軟水で作る際はイタリアでのレシピより多めに塩を入れる必要があるだろう。もしくは地下に10000キロくらいの水道管を掘って現地の硬水を手に入れよう。

 

・卵は思春期のチンコくらいすぐ固くなる

 卵の成分の多くはタンパク質である。タンパク質に熱を加えると凝固(熱変性)することは有機化学を齧っているか風呂でマスターベーションしたことのある男子諸君なら知っているだろう。

 具体的には、白身は55度を過ぎた頃から固まり始めるが完全に固まるのは80度前後である。それに対し黄身は凝固し始める温度は65〜70度だが、その温度を維持すると完全に固まってしまう。このことから、黄身が固まらないカルボナーラを作るためには次の方法が考えられる。

・黄身だけで作るのではなく、白身を混ぜておく

・パスタと混ぜる時間を出来るだけ短くし、早くかき混ぜる

・事前にパスタの温度を少し下げておく

・生クリームを混ぜる

 そう、ここでいよいよ登場するのがカルボナーラを語る際必ず槍玉に挙げられる「生クリーム」である。パスタの本場イタリアでは基本的にパスタに生クリームを入れない。しかしながら店によっては卵が固まるのを防ぐために生クリームを入れることもあるようだ。

 日本においては「生クリーム入れる派」と「生クリーム入れない派」がおよそ50年以上にわたり壮絶な内戦状態にある。過去には入れない派が統治する市町村で生クリームを入れた家族が3世帯まるごと処刑されるという生々しい事件も発生した。しかし10年前に制定された「生クリーム入れようが入れまいがどっちでもいいでしょ法」により国民の思想信条の自由は守られた。

  ではこの究極の難問「カルボナーラに生クリームを入れるべきか否か」にどう立ち向かえばいいだろうか。

 

・生クリームを入れるか入れないかは両方試して自分で判断しろ

 以上。

 

・迷ったら料理人より科学者を信じろ

 先程は洗練された技術を持つ料理人を褒めちぎったが、所詮奴らなど自分の経験でしかものを話せない小卒のクズである。サンプル数1での結果を拡大解釈するような輩の言うことより、バイアスに左右されない科学的データを信じよう。

 

・余熱調理に憧れる気持ちは分かるが、余熱を自在に操れるような料理玄人はそもそもカルボナーラの作り方程度で料理本を開かない

 トピックのタイトルを長くしすぎると書く内容が無くなるという好例である。

 

・グアンチャーレやパンチェッタが手に入らないからってメソメソするな。どうせ目隠しして食えば鶏肉と豚肉の違いも分かりはしない

 上に同じ。

 

カルボナーラの出来不出来に関わらず、やがてお前は広い宇宙の中でただ死ぬ

 ここまで長々と文章を綴ってきたが、こんなものを読んでカルボナーラを作ったところで私も貴方も100年もすれば死んでしまう。その絶対的事実の前にはパスタの美味い不味いなど無意味で、我々が日頃抱いている煩悩や情念や執着もとどのつまりは宇宙の塵芥に過ぎない。深く考えず、思うがままフライパンをゆすり、食欲に従うまま貪る。それでいいと思う。

 

以上。これを読んだ諸君が今後少しでも昨日より美味しいカルボナーラが作れるようになれれば幸いだ。